洗濯機と牛肉



私が今まで誤解していた出来事がある。
近頃その謎が解かれたのでその話。
いや、つまらないですよ、ホント。


随分昔の話になるが、
ハウスのハッシュドビーフのCMで
「アラ、こんなところに牛肉が、たまねぎ〜たまねぎ〜、あったわね。」
というフレーズとともに、おいしそうなハッシュドビーフが出来上がるCMがあったはずだ。


私は近頃まで、誤解していた。
以下私の誤解↓。


晩御飯の材料を買いに家を出た主婦 大原美千代(32才)は、自宅から徒歩10分の距離にある「スーパー大丸」に向かっていた。幾分ワイドショーを長く見すぎたかもしれない、急いで晩御飯に間に合わせなければ、美千代は少しばかり早足でスーパー大丸に向かっていた。夕陽が照らし出す斜陽の町は、美千代の急ぎ足をすぐに早足にさせた。
だが、今日の町は何か様子が違う。
そう予感させる事象的な何かが、皆目見当もつかないが薄っすらと美千代の脳裏に飛来し、あるわだかまりを形造っていた。
(なにか落ち着かないわね、)
急いでるせいかしら?美千代がそんなことを考えていると、自宅から国道まで延びている県道23号線の歩道部分の傍らに、見慣れぬ物体が落ちていることに気が付いた。
最初はなんだろうか?といぶかしんだものの、よくよく見てみると色艶から察するに、どうやら牛肉のようであある。
「アラ、こんなところに牛肉が。」
美千代は発見するや否や、ためらうことなく手提げかばんに牛肉を詰め込むと、その目線の先に茶色い球根状の植物を発見する。
「たまねぎ、たまねぎ、あったわね。」
美千代には「たまねぎ」の存在はあらかじめ規定された出来事だった、
もし牛肉があるのなら、たまねぎも当然あってしかるべきである、そして今夜はハッシュドビーフなのだ。


こんなのだとばかり思っていたのだが、実際は、冷蔵庫を眺めて食材を見つけるという極めて常識的なCMであり。
美千代は牛肉を買ったことを忘れてしまう少々おっちょこちょいでかわいらしい主婦だったのである。
だが、私はこのCMの真実を連れ合いに聞かされた時、大変ショックだった。
確かに私は、その当時幼かったせいもあり、映像の記憶はうすぼんやりとしていて、印象的なフレーズだけが頭の中で再生産されてたのだろう、私の脳の納得のゆく状況として上記のような物語を創作していたのかもしれない。
だが、しかし、その時、いや、今も未だ。
私には道端で牛肉を拾う女性の映像すらぼんやりと頭にあったのだ、驚愕の事実だった。


私は捏造された記憶の存在に気付いてしまった。
国家的陰謀に自分が巻き込まれている、その事実を確信した瞬間だった。
私に偽のハッシュドビーフの記憶を植えつけて、私を一体どうするつもりだったのだろうか?